彼女は時間を飛べるらしい
2007-11-17
1 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:04:36.40 ID:zHwL3wp10
「はあ…」
面倒くさい1日が終わり、俺は下駄箱の前に着いた。
外はもうかなり寒くなり、自分の下駄箱の取っ手も冷たい。
学校がとてもつまらなく感じるのは、どうしてだろうか。
多分、彼女がいないからかもしれない。
別に好きな人がいないわけじゃないけど・・・
ふらふらと外にでようとすると、そこにはあの人がいた。
3 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:09:39.38 ID:zHwL3wp10
同じクラスの、女子。
あまり話すほうではないけど、俺はかなり好みだった。
その子は扉の前にいて、こっちのほうをじっと見てきた。
あまり慣れてない俺は、ちょっと動揺した。
かなりの赤面症だし。
だけど彼女は、何も言わず、こっちを見たまま外に出て行った。
「……?」
なんか妙な感じがしたけれど、自分も靴を履き替え外にでる。
彼女は東門に行ったようだった。
正門から出ないのは珍しいが、わざわざ追うわけにも行かない。
俺はそのまま彼女とは別方向の正門に向かった。
4 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:15:16.97 ID:zHwL3wp10
そとはかなり寒く、上着を着ていなかった俺は身震いをした。
小走りで正門に向かう。
正門には、帰りの車を待っているのか、何人かの生徒がいた。
木の横で雑談をしている下級生、携帯をいじる一人の男子、ベンチに座る女子生徒……
「……あれ?」
俺はふと、ベンチに座る女子生徒から目が離せなくなった。
おかしい。
近づいていくうちに、疑問が確信へと変わる。
俺はかなり驚いた。
さっき東門に行ったはずの、あの子が、そこに座っていた。
6 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:19:48.70 ID:zHwL3wp10
「なんで……」
さっき、あの子は間違いなく東門へと向かっていた。
俺はまっすぐに正門に来た。
ここにあの子が座っているはずが無い……
無意識に、彼女を見つめる。
彼女は顔を上げると、俺のほうを向いた。
俺がじっと見ていることに気づいたのだろうか。
ところが、彼女は俺のほうをじっと見て、ニコッと笑った。
「バレちゃいましたか」
12 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:35:32.53 ID:zHwL3wp10
彼女は腰を浮かし、右に寄った。
「座っていいですよ」
あまりに驚いていたのか、俺は座らずに
「なんで……」とつぶやいた。
きみがなんでここにいるのか。
自分は何かに巻き込まれているのだろうか。
質問は沢山あったけど、とりあえず座った。
好きな女子の横に座るなんて初めてで、
顔が赤くなっているだろうな、と思った。
14 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:43:58.93 ID:zHwL3wp10
先に口を開いたのは彼女だった。
「もしかして、私に会いました?」
その質問は不思議だったが、俺はうなずいた。
「今さっき、下駄箱で君に会ったよね?」
彼女が答えないうちに続ける。
「君は、東門に向かっていった。
なのに、なぜか今ここに座ってる……
一体、どういうこと?」
質問しながらも考える。
東門を出て、走って正門まで廻り、正門のベンチに座る。
そのルートを頭で思い浮かべる。
やはり、どう考えても無理だ。
15 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:51:23.96 ID:zHwL3wp10
俺が昇降口を出てからこのベンチに来るまで、せいぜい一分だ。
学校の外を廻ってここに一分で着くには、
多分陸上部が全速力で走ってやっとだろう。
息を切らずにここに座っていられるはずが無い。
そう思い、彼女の顔を見るが、もちろん疲れてはいないようだった。
俺の質問に、彼女は考え込んだ。
もしかしたら、ほとんど話したことが無いのに、
この質問はおかしかったかもしれない。
俺が何か言葉を継ごうと思った瞬間、彼女のほうが先に口を開いた。
「多分、それは」
彼女はまじめな顔で言った。
「未来の、私かもしれません」
16 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:02:31.03 ID:zHwL3wp10
「……未来の?」
その意味が分からず、今度は俺のほうが考え込んだ。
「どういう……」
「笑わないで聞いてください」
彼女はまた、じっと俺のほうを見た。
「私は、時を飛べるんです」
ほんの何分で、俺は何回驚いただろう。
17 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:13:17.54 ID:zHwL3wp10
「『時』についての話とかは好きですか?」
「……まあ、小説とかで読んだことはあるよ」
「面白いですよね。色々な『時』の飛び方があって。
タイムマシンに始まって、突然タイムスリップしてしまう人とか、
超能力を持っているとか」
「ああ、うん」一体、何の話だろう?
「でも、絶対、ああいう『時』のストーリーって、矛盾が生じるんですよ。
現実には無い話ですから、当然ですけど」
俺にもそれぐらいは理解できた。
必ずというほどではないけれど、少しぐらい矛盾が生じて当たり前だ。
『タイムパラドックス』という言葉があるくらいなのだから。
「私にも、そういう力があると思ってください」
また、にっこりと笑う。
冗談なのだろうか、と不安になり、つられて苦笑いをしてみる。
「本当に、あるんです」彼女は二度言った。
20 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:23:17.50 ID:zHwL3wp10
「あなたがさっき私にあったのは、いつですか?」彼女が質問した。
「うーん、2分前くらい」
そういうと、彼女は考え込んだ。何か思うことがあるらしい。
俺のほうは、かなり混乱していた。
同じクラスの、ほとんど話したことの無い同級生。
前から好きだと思っていた彼女から、
こんなことを言われるとは思ってもいなかった。
俺は何かに巻き込まれているのだろうか?
俺は、どうすればいいのだろう?
彼女が顔を上げ、混乱している俺に追い討ちをかけた。
「多分、あなたがさっき見たというのは、20分後の私です」
22 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:31:14.20 ID:zHwL3wp10
「え?」
一瞬、彼女がからかっているのではないかという疑問にかられる。
そんな俺の顔を見て、彼女は少し下を向き、顔を赤らめた。
「こんなこと言っても、信じてもらえないですよね」
「いや、そんなことはないけど」
「ほとんど話したことが無いんです。他の人に。
話したって信じてもらえないですし、こんな話」
「じゃあ、なんで……」
彼女がまっすぐ俺を見る。
「もしかしたら、あなたが関係しているかもしれないからです」
23 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:38:36.31 ID:zHwL3wp10
「まず、私の話をしたほうがいいみたいですね」
そういうと、彼女は自分のポケットから何かを取り出した。それを俺に渡す。
何かのカードのようだった。
テレホンカードぐらいの大きさで、真っ黒の面に青く縁取りがしてある。
中央に、赤色で何かデジタル数字が刻まれていた。
『00/00/00 00:22:58』
見ていると、57、56と数字が少しずつ減っていった。
これは秒数を表しているのかもしれない。ということは、これは時計だろうか。
「これは……?」
「ドラえもんとかはいいですよね。頼めば何度でもタイムマシンに乗せてくれますから。」
言っていることが分からず、彼女の顔を見た。
「これは、私が『時』を飛ぶ力を得る代わりに、受け取った物です。
いわば、『対価』のようなものでしょうか」
24 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:45:11.35 ID:zHwL3wp10
「対価?どういうこと?」
「ただで、こんな力を得ることはできないですよね」彼女は自嘲的に言った。
「たとえば、私が1時間前に行ったとします。タイムマシンで。
一応、こんな力がバレるわけにはいきませんから、隠れて行動します。
こうすると、私はこの時間に普通の私と未来の私、二人存在することになります」
「うん」何とか話にはついていけた。
「そして1時間後、普通の私が1時間前に行くことになりますから、
その後、未来の私が普通の私のように行動すれば、矛盾は起きません」
「……うん」
少し説明が足りないような気がしたが、彼女にはそれを気にする暇も無いようだった。
25 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:52:16.34 ID:zHwL3wp10
「でもそこで、未来の私が、途中で死んだらどうなると思いますか?」
「……」
どうなるのだろう。俺は考え込む。
「たぶん、警察が来て、ニュースになって……」あてずっぽうで答えてみた。
「そのとおりです」
彼女はうなずいた。
「そうすると、大変なことになります。
たとえば家にいた私とその家族が、私が死んでいることをニュースで見ることになります。
混乱するなんてレベルの話じゃありません」
たしかに、ニュースでもう一人の自分が死んでいるのを見たら、訳が分からなくなるだろう。
27 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:03:45.27 ID:zHwL3wp10
「だから、時間を戻る際には、私が他の人に見られないことが第一条件になります。
死亡してしまうなど、もってのほかです」
彼女の回りくどい言い方で、俺は気がついた。
「じゃあ、このカードの数字は・・・」
「そうです」
彼女は悲しげにうつむいた。
「それは、私の、寿命です」
30 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:13:58.32 ID:zHwL3wp10
「つまり」おれ自身が整理するために、彼女の話をまとめることにした。
「えっと、時間を戻るには、死ぬ訳にはいかない。
死ぬ訳にはいかないから、力を得る際に、
寿命を知らせるこのカードをもらった、そういうこと?」
「大正解です」寂しげに彼女が笑う。
「つまり、私が時間を戻れるのは、この時間以下ということになります」カードに視線を落とす。
「そんな……」俺は絶句した。
寿命を知らされる?自分がいつ死ぬか?カード1枚で?
俺はどうなるだろう?平常でいられるだろうか?
「怖いですよ」
また顔に出てしまったのか、彼女が俺の心を読んだように言う。
「いつ死ぬか分からないのも怖いかもしれませんが、分かってしまうのも。
自分が何のために生きているのか分からなくなりますから」
31 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:19:14.96 ID:zHwL3wp10
そこで俺は重要なことに気づいた。かなり重要なことに。
「ちょ、ちょっと待って!」
カードの数字は、
『00/00/00 00:22:29』
にかわっていた。
つまり・・・
俺は息が止まりそうになった。
「き、君は……
あと22分で、死ぬのか?」
「はい」
どうしてだろうか、彼女はにっこり笑った。
33 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:31:32.71 ID:zHwL3wp10
「以上で私の話は終わりです」
おれはあまりの衝撃に、声も出せないでいた。
同じ年で、この子はこんな重圧を背負っていたのか。
おれは、さっきまで恋愛について考えていたというのに……
自分が恥ずかしくなった。彼女はもう20分で死ぬというのに。
あと1年で死ぬというのに、いつもどおり生活し、
あと1ヶ月で死ぬというのに、いつもどおり学校に通い、
あと20分で死ぬというのに、俺と話をしている。
「……すごいね」思わず、言った。
34 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:38:47.91 ID:zHwL3wp10
「君はこれから、どうするんだ?」思わず、聞いてみる。
「あなたは私を見たんですよね?」彼女が確認をしてきた。
「うん、さっき」俺がうなずくと、彼女が突然、立ち上がった。
「ということは、もう行かなければいけません」
「え?どういうこと?」
「私は最後に、時間を飛びます。18分ぐらい前に」
「ど、どうして?」
彼女は俺の前に来た。まじめな顔で俺を見つめる。
「あなたを、救うために」
37 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 18:01:00.36 ID:zHwL3wp10
「さっき18分ぐらい前に、あなたは何をしていましたか?」
突然、脈路の無い質問をしてきた。
俺はマジで考え込んだ。
「……多分、職員室前にいたと思う」確かそうだった。
帰りのホームルームが終わり、すぐに荷物を持って1階へ向かった。
先生にプリントを出しに行った。
気力の無いまま、先生と会話し、職員室を出た。
「私も、職員室前にいたんです。化学の先生に用があって。
職員室から出て、昇降口に向かったら、
遠くの廊下であなたが歩いているのを見ました」
「確かに、俺はまっすぐ昇降口に向かったよ、帰るために」
無意識だったので、後ろで誰が歩いているのかは知らなかったが。
38 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 18:14:26.71 ID:zHwL3wp10
「私も、職員室前にいたんです。化学の先生に用があって。
職員室から出て、すぐに中央玄関に向かったら、
遠くの廊下であなたが昇降口に向かって歩いているのを見ました」
「確かに、俺はまっすぐ昇降口に向かったよ、帰るために」
無意識だったので、後ろで誰が歩いているのかはもちろん分からなかったが。
でも、それが……
「あ」
もしかして……あれか?
39 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 18:23:40.53 ID:zHwL3wp10
「気がつきました?」彼女が見透かしたように言った。
「もしかして、あの声が?」俺は言った。
だからか。俺はやっと理解した。
どうして、彼女が昇降口にいたのか。
どうしてそのとき、俺をじっと見ていたのか。
どうして今、時間を割いてまで俺と話をしているのか。
そして、彼女がどうして今から飛ぶのか。
「たぶん、考えているとおりです。
だから私は、あなたを救いに行かなければなりません」
俺は頭を抱えた。
「そうか……」
叫びたい。泣きたい。
理解しても、それを認めたくない。
やっとのことで、言った。
「俺は、確かに、君に、救われた」
48 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:19:02.52 ID:zHwL3wp10
ひとつの話には、複数の視点がある。
みんながそうとは気づかないだけで。
俺は18分前を思い出した。
職員室を出た後、俺は廊下を歩き、昇降口へと向かった。
廊下の窓からは校庭が見え、多くの運動部が活動していた。
そのとき俺は何も考えず、一階の廊下をふらつきながら歩いていた。
いつもと変わらない日常が、また1日終わった。ただそれだけだった。
そのとき、後ろの方から、
「ストーップ!」
かなり大きな声が聞こえた。
50 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:25:32.28 ID:zHwL3wp10
びくっと足を止め、声のするほうを振り返ろうとした。
ところが、その瞬間目の前でガラスが割れる音が聞こえた。
とんでもないことが起こっていた。
なにか細長いものがガラスを突き破り、廊下に転がっていた。
これは、陸上で使う競技用の槍だろうか。
「ヤバッ!おーい、ガラス割れたぞー」
校庭のほうから声が聞こえる。
ぞっとした。
もう一歩進んでいたら、俺に突き刺さっていたかもしれない。
陸上部の連中が集まってきて、なにやら話していた。
下手に巻き込まれたら面倒かもしれない。
「まったく……」
ため息をつくと、俺はガラスの破片を飛び越え、下駄箱横のトイレに向かった。
さっき聞こえた大きな声はもう忘れている。
トイレから出て、自分の下駄箱にいく。
「はあ……
ったく、面倒くさい1日だ」
52 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:28:08.66 ID:zHwL3wp10
ひとつの話には、複数の視点がある。
みんながそうとは気づかないだけで。
「私は、先生との話が終わって、職員室から廊下に出ました。
外靴は持っていたので、そのまま中央の玄関から外に出るつもりでした。
そっちのほうが帰るのに早いですし」
彼女は淡々と話し始めた。
「でも、職員室を出ると、前に誰かが歩いているのが見えました。
その姿をみて、私は驚きました。
それは、『私』だったんです」
53 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:29:21.03 ID:zHwL3wp10
位置関係を考えるだけで複雑だ。
廊下を歩く俺。
その後ろには急に現れた『未来の』彼女。
そしてその後ろに、職員室から出てきた『現在の』彼女。
「未来の『私』は、なにかあせっているようでした。
急いで中央の階段から降りてきたみたいで。
そして、向こうのほうを見て、未来の『私』は叫んだんです」
「その声を、俺は聞いたんだ」
俺と彼女、二つの声が、ベンチの上で重なる。
「ストップ」
54 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:36:58.79 ID:zHwL3wp10
つまり、一体どういうことか。
俺はあの場所でで足を止めなければ、死んでいたかもしれない。
それをとめるために、未来の彼女は、その時間に現れ、叫んだ。
そのおかげで、俺は足を止め、結果的に「救われた」。
俺が振り返ろうとした瞬間、槍が突き破ってきたので俺は振り返るのをやめた。
もし振り返っていれば、二人の人がいたのが分かったはずだ。
叫んだ声の主『未来の彼女』と、その後ろに、それを目撃した、『現在の彼女』が。
56 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:40:27.02 ID:zHwL3wp10
その後、俺はトイレに向かった。
その後、『現在の』彼女は、状況を確認した。
自分が見たのが、『未来の』彼女であること。
その先の俺を、救ったこと。
「彼と話さなければいけない」そう思い、中央玄関から出て、ベンチで待つことにしたのだろう。
その後、『未来の』彼女は俺の後ろをついてきた。
そして、昇降口の扉の前に立ち、俺と目を合わせた。
もしかしたら、あの時彼女は俺と話したがっていたのかもしれない。
でも、それはできなかった。
なぜなら、俺は彼女が時を飛べることをまだ知っていないから。
58 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:46:36.21 ID:zHwL3wp10
「どうして……」
全ての真相が分かった俺は、頭を抱えたまま何度も呟いた。
日常の生活に疲れていた俺。
夢も持たず、目標も持たず、ただ、時間が過ぎるのを待っていた。
恋愛してみたいという意欲だって、日常生活に飽きていたからだ。
こんな俺を……
「どうして……おれを、そうまでして、救ったんだ」
残り20分の彼女の命。
18分前には、あと38分あった。
ここで俺と話をせずに、家で家族と最後の時間を過ごすとか、
やれることがあったはずだ。それなのに……
わざわざベンチで俺を待った。
わざわざ俺に『時』について説明した。
わざわざ俺に真相を教えてくれた。
「うあああああああ……」
彼女のその行動に、その心に、
そして、自分の不甲斐無さに、俺は絶望して、小さく叫んだ。
60 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:51:31.50 ID:zHwL3wp10
「どうして、だと思います?」
その言葉に、俺は顔を上げた。
「そんなの、決まってるじゃないですか」
彼女は顔を少し赤らめて、言った。
「あなたが、好きだからです」
63 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:56:01.15 ID:zHwL3wp10
「私は18分前、未来の自分を見ました。
そして、その必死な姿を見て、気づいたんです。
自分は、あなたを救おうとしているって」
彼女は俺に話し続ける。
「私は、自分の状況に諦めを感じていたんです。
寿命を知らせるこのカードによって、生活は縛られました。
このカードのせいで、私はずっと『死』について考えさせられました。
そして、あなたに会って、私は気づきました。
残り20分の命だって、誰かを救って死ぬことができるなら。
誰かに、生きることの大切さを身をもって教えることができるなら。
そして、誰かに、自分の気持ちを伝えることができるなら」
「それだけで、世界は変わるんです」
68 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:01:40.05 ID:zHwL3wp10
俺は、目の前に立つその少女が、天使のように見えた。
「……ありがとう」
ただ、今の俺は、彼女にこんな重い荷物を背負わせるわけにはいかないと思った。
だから、精一杯の気持ちをこめて、こう言った。
「おれは、救われた。
未来の君に、だけじゃない。
教えてくれた今の君に、救われた」
「おれも、君が好きだ」
74 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:09:04.01 ID:zHwL3wp10
突然、彼女が泣き出した。
「うっ……」
俺はなにか間違ったことでもしたのかと思い、慌てた。
こういう時どうすればいいのか、俺にはわからなかった。
でも、そんなことを考える必要はなかった。
「すいません、うれしくって」彼女は顔をくしゃくしゃにして笑った。
「実は、私が未来の自分を見たとき、少し不思議に思っていました。
未来の『私』は、泣いていたんです。
どうしてかなあ、と思っていたんですけど、やっと、その意味が分かりました」
そのとき彼女が見せた笑顔は最高だった。
「気持ちは、伝わるんですね」
75 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:12:04.05 ID:zHwL3wp10
彼女は俺の手からカードを取り、じっと見つめた。
「そろそろ、時間ですね」
「ま、待ってくれ」
思わず大きな声で言った。
「私が20分前のあなたを救わなければ、タイムパラドックスが起こってしまいます」
「待ってくれ」
タイムパラドックス?そんなの関係ない。
飛ばないで欲しい。
「私がいまから飛べば、ちゃんとあなたを救うことができます」
「待ってくれ、待ってくれ……」
76 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:15:06.32 ID:zHwL3wp10
「私が飛ぶのは、タイムパラドックスとか、そんな理由じゃないですよ。
あなたが好きだからです。あなたを、救うためです。
あなたにはまだやることがあります。
だから、どうか、生きてください」
「手を、握ってもいいですか?」彼女は俺の左手を握った。
その手が暖かくて、彼女が生きているのを感じた。
彼女はうっすらと泣いている。
「必ず、あなたを、救いますから」
彼女は、俺の前から、消えていった。
85 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:25:33.05 ID:zHwL3wp10
何も考えられない。
ただ俺は、ベンチに座っていた。
どうすればよかった?どうすべきだった?
彼女の手をつかんで、消えないようにすべきだったか?
彼女に『好きだ』と伝えたのは間違いだったか?
20分前の彼女に、話しかけるべきだったか?
あの廊下を通らないべきだったか?
もっと、まっすぐに、生きるべきだったか?
彼女に救われたはずなのに、おれは、どうすればいいかわからなかった。
89 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:32:02.82 ID:zHwL3wp10
頭を抱えていると、声が聞こえた。
さっき、彼女が言っていた言葉。
「あなたにまだ、やることがあります」
頭の中でなにかが割れ始める。
救うのは大体16、7分前の俺。
カードの数字は、『00:00:20』。
差は?この3分間は?
『未来の』彼女は俺を救って、それからどうした?
俺は立ち上がり、走り出した。
彼女が歩いていった、東門へ。
96 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:36:32.59 ID:zHwL3wp10
走りながらも、頭の中はいろいろなことを考えている。
どうして気づかなかったんだろう。
彼女は待っているはずだ。東門で。
彼女が16分前に飛んだのは、あと4分、なにかをするためだ。
何のためだろうか?
下駄箱のときの彼女の目を思い出す。
「もしかしたら彼女は俺と話したがっていたのかもしれない」
彼女とベンチで話したのは3分ぐらい。
どうだろうか?追いつくだろうか?
彼女は待っているはずだ。俺と、最後の会話をするために。
残り時間数秒を刻む、呪いのカードとともに。
俺は全身の気持ちを集中させ、本気で走った。
100 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:42:15.27 ID:zHwL3wp10
東門の近くまで着き、俺は彼女の姿を探した。
彼女はどこにいるのだろう。
どうやら、学校の敷地内にはいないのか……
そう思い、東門から外を見ると、外の道路に、彼女がいた。
俺の姿を見つけると、さっきのようににっこりと笑う。
そして、少し大声で言った。
「バレちゃいましたか」
102 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:43:28.89 ID:zHwL3wp10
彼女は、俺とベンチで話したように、そう言って笑った。
時間がもうあまりないことは分かってる。でも、俺は言いたかった。
俺を救ってくれた、感謝の気持ちを。
20分前にストップをかけてくれた彼女に。
生きることの大切さを教えてくれた彼女に。
最後に、俺と話す時間を作ってくれた、彼女に。
104 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:46:11.18 ID:zHwL3wp10
彼女は、俺とベンチで話したように、そう言って笑った。
時間がもうあまりないことは分かってる。でも、俺は言いたかった。
俺を救ってくれた、感謝の気持ちを。
20分前にストップをかけてくれた彼女に。
生きることの大切さを教えてくれた彼女に。
最後に、俺と話す時間を作ってくれた、彼女に。
106 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:50:38.61 ID:zHwL3wp10
彼女はまだ笑いながら、言った。
「ちゃんと、救えましたよ」
俺はその言葉で、涙が出てきた。
107 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:55:48.62 ID:zHwL3wp10
何を言えばいいのか、もう何を言っているのかも分からなくなっていた。
ただ、俺は叫んだ。
「君を救いたい」
「時間なんて、寿命なんて、矛盾なんて、関係ない。
君が俺を救ったように、俺が君を、その運命から、救いたい」
誰が聞いても笑い出しそうな台詞を、俺は本気で叫んだ。
どうすればいいかなんて、俺には関係なかった。
奇跡が起こるのを祈るしかなかった。
彼女は少し驚いた顔をして、その後、にっこりと笑った。
そして、突然、こんなことを言った。
「左のポケットを見てください」
109 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:59:54.69 ID:zHwL3wp10
ポケット?どういうことだろうか。
制服のズボンは、本気で走ったせいでくしゃくしゃになっていた。
俺は左のポケットに手をやる。
彼女に驚かされたのは、何度目だろうか?
そこには、彼女が持っているはずの、寿命を知らせるカードが、あった。
111 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:04:15.86 ID:zHwL3wp10
彼女の声が聞こえる。
「これは、私が『時』を飛ぶ力を得る代わりに、受け取った物です」
「あなたにはまだ、やることがあります」
「残り少しのの命だって、誰かを救って死ぬことができるなら。
誰かに、生きることの大切さを身をもって教えることができるなら。
そして、誰かに、自分の気持ちを伝えることができるなら。
それだけで、世界は変わるんです」
そのとき彼女の右から、大きなトラックが近づいていた。
進行方向がずれていて、まっすぐに彼女に向かってくるようだった。
時計は、残り03秒を示している。
114 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:06:13.52 ID:zHwL3wp10
頭の中で、次々となにかが組みあがる。
力のために、このカードを持つ必要があった。
多分、自分ではカードを捨てることができないだろう。
ならば、時を飛ぶ力を捨て、寿命の呪いから解き放たれるには、どうすればいいのか?
だから、彼女は俺にカードを渡した。
俺と手をつないだときに、ポケットの中に滑り込ませて。
俺はもう、迷わなかった。
彼女を救うと、決めたから。
俺は本気で、カードを叩き割った。
119 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:15:44.21 ID:zHwL3wp10
彼女が走りよってきた。
俺は泣きながら、彼女を抱きしめた。
「ありがとう、ございます」彼女も泣いているようだった。
「あなたなら、やってくれると思っていました」
「私は、あなたに救われました」
トラックはどこかに行ったらしい。もう気にも留めていないけど。
彼女を離すと、二人で笑った。
初めて彼女の笑い顔を見た。
123 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:19:12.74 ID:zHwL3wp10
落ち着いてきた俺は、彼女に尋ねた。
俺がここまで走って追いついたのも、呪いを解く術に気づいたのも、
奇跡だと思っていたけれど……
「もしかして、俺がここに来るのまで分かってて、
カードを叩き割るということまで思いつくと賭けて、
カードをポケットに入れたわけ?」
俺にまくし立てられたのに驚いたのか、
彼女は舌を出して、そして言った。あの時のように。
「バレちゃいましたか」
「でも、賭けたんじゃありません」
彼女はまた、ニッコリと笑った。
「あなたを、信じていましたから」
おわり
137 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:28:58.88 ID:zHwL3wp10
読んでくれてありがとうございました
こういう話はオチが難しい、絶対に
(彼女が死ぬエンドも考えていたんだけどね)
一度でいいから「時」についての小説を
書いてみたいと思って、初めてスレを立てました
またスレ立てるときはこの鳥で立てます
そのときはよろしくー
143 名前: ◆saki4qw0nY [] 投稿日:2007/11/17(土) 21:43:34.63 ID:zHwL3wp10
分からなかった方のために構想メモ
ってこれを見ても分からないか、きたないし
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 21:20:42.24 ID:Jf54ciAQ0
俺も>>1を信じていましたから
ハッピーエンド乙
「はあ…」
面倒くさい1日が終わり、俺は下駄箱の前に着いた。
外はもうかなり寒くなり、自分の下駄箱の取っ手も冷たい。
学校がとてもつまらなく感じるのは、どうしてだろうか。
多分、彼女がいないからかもしれない。
別に好きな人がいないわけじゃないけど・・・
ふらふらと外にでようとすると、そこにはあの人がいた。
3 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:09:39.38 ID:zHwL3wp10
同じクラスの、女子。
あまり話すほうではないけど、俺はかなり好みだった。
その子は扉の前にいて、こっちのほうをじっと見てきた。
あまり慣れてない俺は、ちょっと動揺した。
かなりの赤面症だし。
だけど彼女は、何も言わず、こっちを見たまま外に出て行った。
「……?」
なんか妙な感じがしたけれど、自分も靴を履き替え外にでる。
彼女は東門に行ったようだった。
正門から出ないのは珍しいが、わざわざ追うわけにも行かない。
俺はそのまま彼女とは別方向の正門に向かった。
4 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:15:16.97 ID:zHwL3wp10
そとはかなり寒く、上着を着ていなかった俺は身震いをした。
小走りで正門に向かう。
正門には、帰りの車を待っているのか、何人かの生徒がいた。
木の横で雑談をしている下級生、携帯をいじる一人の男子、ベンチに座る女子生徒……
「……あれ?」
俺はふと、ベンチに座る女子生徒から目が離せなくなった。
おかしい。
近づいていくうちに、疑問が確信へと変わる。
俺はかなり驚いた。
さっき東門に行ったはずの、あの子が、そこに座っていた。
6 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:19:48.70 ID:zHwL3wp10
「なんで……」
さっき、あの子は間違いなく東門へと向かっていた。
俺はまっすぐに正門に来た。
ここにあの子が座っているはずが無い……
無意識に、彼女を見つめる。
彼女は顔を上げると、俺のほうを向いた。
俺がじっと見ていることに気づいたのだろうか。
ところが、彼女は俺のほうをじっと見て、ニコッと笑った。
「バレちゃいましたか」
12 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:35:32.53 ID:zHwL3wp10
彼女は腰を浮かし、右に寄った。
「座っていいですよ」
あまりに驚いていたのか、俺は座らずに
「なんで……」とつぶやいた。
きみがなんでここにいるのか。
自分は何かに巻き込まれているのだろうか。
質問は沢山あったけど、とりあえず座った。
好きな女子の横に座るなんて初めてで、
顔が赤くなっているだろうな、と思った。
14 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:43:58.93 ID:zHwL3wp10
先に口を開いたのは彼女だった。
「もしかして、私に会いました?」
その質問は不思議だったが、俺はうなずいた。
「今さっき、下駄箱で君に会ったよね?」
彼女が答えないうちに続ける。
「君は、東門に向かっていった。
なのに、なぜか今ここに座ってる……
一体、どういうこと?」
質問しながらも考える。
東門を出て、走って正門まで廻り、正門のベンチに座る。
そのルートを頭で思い浮かべる。
やはり、どう考えても無理だ。
15 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 15:51:23.96 ID:zHwL3wp10
俺が昇降口を出てからこのベンチに来るまで、せいぜい一分だ。
学校の外を廻ってここに一分で着くには、
多分陸上部が全速力で走ってやっとだろう。
息を切らずにここに座っていられるはずが無い。
そう思い、彼女の顔を見るが、もちろん疲れてはいないようだった。
俺の質問に、彼女は考え込んだ。
もしかしたら、ほとんど話したことが無いのに、
この質問はおかしかったかもしれない。
俺が何か言葉を継ごうと思った瞬間、彼女のほうが先に口を開いた。
「多分、それは」
彼女はまじめな顔で言った。
「未来の、私かもしれません」
16 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:02:31.03 ID:zHwL3wp10
「……未来の?」
その意味が分からず、今度は俺のほうが考え込んだ。
「どういう……」
「笑わないで聞いてください」
彼女はまた、じっと俺のほうを見た。
「私は、時を飛べるんです」
ほんの何分で、俺は何回驚いただろう。
17 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:13:17.54 ID:zHwL3wp10
「『時』についての話とかは好きですか?」
「……まあ、小説とかで読んだことはあるよ」
「面白いですよね。色々な『時』の飛び方があって。
タイムマシンに始まって、突然タイムスリップしてしまう人とか、
超能力を持っているとか」
「ああ、うん」一体、何の話だろう?
「でも、絶対、ああいう『時』のストーリーって、矛盾が生じるんですよ。
現実には無い話ですから、当然ですけど」
俺にもそれぐらいは理解できた。
必ずというほどではないけれど、少しぐらい矛盾が生じて当たり前だ。
『タイムパラドックス』という言葉があるくらいなのだから。
「私にも、そういう力があると思ってください」
また、にっこりと笑う。
冗談なのだろうか、と不安になり、つられて苦笑いをしてみる。
「本当に、あるんです」彼女は二度言った。
20 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:23:17.50 ID:zHwL3wp10
「あなたがさっき私にあったのは、いつですか?」彼女が質問した。
「うーん、2分前くらい」
そういうと、彼女は考え込んだ。何か思うことがあるらしい。
俺のほうは、かなり混乱していた。
同じクラスの、ほとんど話したことの無い同級生。
前から好きだと思っていた彼女から、
こんなことを言われるとは思ってもいなかった。
俺は何かに巻き込まれているのだろうか?
俺は、どうすればいいのだろう?
彼女が顔を上げ、混乱している俺に追い討ちをかけた。
「多分、あなたがさっき見たというのは、20分後の私です」
22 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:31:14.20 ID:zHwL3wp10
「え?」
一瞬、彼女がからかっているのではないかという疑問にかられる。
そんな俺の顔を見て、彼女は少し下を向き、顔を赤らめた。
「こんなこと言っても、信じてもらえないですよね」
「いや、そんなことはないけど」
「ほとんど話したことが無いんです。他の人に。
話したって信じてもらえないですし、こんな話」
「じゃあ、なんで……」
彼女がまっすぐ俺を見る。
「もしかしたら、あなたが関係しているかもしれないからです」
23 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:38:36.31 ID:zHwL3wp10
「まず、私の話をしたほうがいいみたいですね」
そういうと、彼女は自分のポケットから何かを取り出した。それを俺に渡す。
何かのカードのようだった。
テレホンカードぐらいの大きさで、真っ黒の面に青く縁取りがしてある。
中央に、赤色で何かデジタル数字が刻まれていた。
『00/00/00 00:22:58』
見ていると、57、56と数字が少しずつ減っていった。
これは秒数を表しているのかもしれない。ということは、これは時計だろうか。
「これは……?」
「ドラえもんとかはいいですよね。頼めば何度でもタイムマシンに乗せてくれますから。」
言っていることが分からず、彼女の顔を見た。
「これは、私が『時』を飛ぶ力を得る代わりに、受け取った物です。
いわば、『対価』のようなものでしょうか」
24 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:45:11.35 ID:zHwL3wp10
「対価?どういうこと?」
「ただで、こんな力を得ることはできないですよね」彼女は自嘲的に言った。
「たとえば、私が1時間前に行ったとします。タイムマシンで。
一応、こんな力がバレるわけにはいきませんから、隠れて行動します。
こうすると、私はこの時間に普通の私と未来の私、二人存在することになります」
「うん」何とか話にはついていけた。
「そして1時間後、普通の私が1時間前に行くことになりますから、
その後、未来の私が普通の私のように行動すれば、矛盾は起きません」
「……うん」
少し説明が足りないような気がしたが、彼女にはそれを気にする暇も無いようだった。
25 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 16:52:16.34 ID:zHwL3wp10
「でもそこで、未来の私が、途中で死んだらどうなると思いますか?」
「……」
どうなるのだろう。俺は考え込む。
「たぶん、警察が来て、ニュースになって……」あてずっぽうで答えてみた。
「そのとおりです」
彼女はうなずいた。
「そうすると、大変なことになります。
たとえば家にいた私とその家族が、私が死んでいることをニュースで見ることになります。
混乱するなんてレベルの話じゃありません」
たしかに、ニュースでもう一人の自分が死んでいるのを見たら、訳が分からなくなるだろう。
27 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:03:45.27 ID:zHwL3wp10
「だから、時間を戻る際には、私が他の人に見られないことが第一条件になります。
死亡してしまうなど、もってのほかです」
彼女の回りくどい言い方で、俺は気がついた。
「じゃあ、このカードの数字は・・・」
「そうです」
彼女は悲しげにうつむいた。
「それは、私の、寿命です」
30 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:13:58.32 ID:zHwL3wp10
「つまり」おれ自身が整理するために、彼女の話をまとめることにした。
「えっと、時間を戻るには、死ぬ訳にはいかない。
死ぬ訳にはいかないから、力を得る際に、
寿命を知らせるこのカードをもらった、そういうこと?」
「大正解です」寂しげに彼女が笑う。
「つまり、私が時間を戻れるのは、この時間以下ということになります」カードに視線を落とす。
「そんな……」俺は絶句した。
寿命を知らされる?自分がいつ死ぬか?カード1枚で?
俺はどうなるだろう?平常でいられるだろうか?
「怖いですよ」
また顔に出てしまったのか、彼女が俺の心を読んだように言う。
「いつ死ぬか分からないのも怖いかもしれませんが、分かってしまうのも。
自分が何のために生きているのか分からなくなりますから」
31 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:19:14.96 ID:zHwL3wp10
そこで俺は重要なことに気づいた。かなり重要なことに。
「ちょ、ちょっと待って!」
カードの数字は、
『00/00/00 00:22:29』
にかわっていた。
つまり・・・
俺は息が止まりそうになった。
「き、君は……
あと22分で、死ぬのか?」
「はい」
どうしてだろうか、彼女はにっこり笑った。
33 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:31:32.71 ID:zHwL3wp10
「以上で私の話は終わりです」
おれはあまりの衝撃に、声も出せないでいた。
同じ年で、この子はこんな重圧を背負っていたのか。
おれは、さっきまで恋愛について考えていたというのに……
自分が恥ずかしくなった。彼女はもう20分で死ぬというのに。
あと1年で死ぬというのに、いつもどおり生活し、
あと1ヶ月で死ぬというのに、いつもどおり学校に通い、
あと20分で死ぬというのに、俺と話をしている。
「……すごいね」思わず、言った。
34 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 17:38:47.91 ID:zHwL3wp10
「君はこれから、どうするんだ?」思わず、聞いてみる。
「あなたは私を見たんですよね?」彼女が確認をしてきた。
「うん、さっき」俺がうなずくと、彼女が突然、立ち上がった。
「ということは、もう行かなければいけません」
「え?どういうこと?」
「私は最後に、時間を飛びます。18分ぐらい前に」
「ど、どうして?」
彼女は俺の前に来た。まじめな顔で俺を見つめる。
「あなたを、救うために」
37 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 18:01:00.36 ID:zHwL3wp10
「さっき18分ぐらい前に、あなたは何をしていましたか?」
突然、脈路の無い質問をしてきた。
俺はマジで考え込んだ。
「……多分、職員室前にいたと思う」確かそうだった。
帰りのホームルームが終わり、すぐに荷物を持って1階へ向かった。
先生にプリントを出しに行った。
気力の無いまま、先生と会話し、職員室を出た。
「私も、職員室前にいたんです。化学の先生に用があって。
職員室から出て、昇降口に向かったら、
遠くの廊下であなたが歩いているのを見ました」
「確かに、俺はまっすぐ昇降口に向かったよ、帰るために」
無意識だったので、後ろで誰が歩いているのかは知らなかったが。
38 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 18:14:26.71 ID:zHwL3wp10
「私も、職員室前にいたんです。化学の先生に用があって。
職員室から出て、すぐに中央玄関に向かったら、
遠くの廊下であなたが昇降口に向かって歩いているのを見ました」
「確かに、俺はまっすぐ昇降口に向かったよ、帰るために」
無意識だったので、後ろで誰が歩いているのかはもちろん分からなかったが。
でも、それが……
「あ」
もしかして……あれか?
39 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 18:23:40.53 ID:zHwL3wp10
「気がつきました?」彼女が見透かしたように言った。
「もしかして、あの声が?」俺は言った。
だからか。俺はやっと理解した。
どうして、彼女が昇降口にいたのか。
どうしてそのとき、俺をじっと見ていたのか。
どうして今、時間を割いてまで俺と話をしているのか。
そして、彼女がどうして今から飛ぶのか。
「たぶん、考えているとおりです。
だから私は、あなたを救いに行かなければなりません」
俺は頭を抱えた。
「そうか……」
叫びたい。泣きたい。
理解しても、それを認めたくない。
やっとのことで、言った。
「俺は、確かに、君に、救われた」
48 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:19:02.52 ID:zHwL3wp10
ひとつの話には、複数の視点がある。
みんながそうとは気づかないだけで。
俺は18分前を思い出した。
職員室を出た後、俺は廊下を歩き、昇降口へと向かった。
廊下の窓からは校庭が見え、多くの運動部が活動していた。
そのとき俺は何も考えず、一階の廊下をふらつきながら歩いていた。
いつもと変わらない日常が、また1日終わった。ただそれだけだった。
そのとき、後ろの方から、
「ストーップ!」
かなり大きな声が聞こえた。
50 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:25:32.28 ID:zHwL3wp10
びくっと足を止め、声のするほうを振り返ろうとした。
ところが、その瞬間目の前でガラスが割れる音が聞こえた。
とんでもないことが起こっていた。
なにか細長いものがガラスを突き破り、廊下に転がっていた。
これは、陸上で使う競技用の槍だろうか。
「ヤバッ!おーい、ガラス割れたぞー」
校庭のほうから声が聞こえる。
ぞっとした。
もう一歩進んでいたら、俺に突き刺さっていたかもしれない。
陸上部の連中が集まってきて、なにやら話していた。
下手に巻き込まれたら面倒かもしれない。
「まったく……」
ため息をつくと、俺はガラスの破片を飛び越え、下駄箱横のトイレに向かった。
さっき聞こえた大きな声はもう忘れている。
トイレから出て、自分の下駄箱にいく。
「はあ……
ったく、面倒くさい1日だ」
52 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:28:08.66 ID:zHwL3wp10
ひとつの話には、複数の視点がある。
みんながそうとは気づかないだけで。
「私は、先生との話が終わって、職員室から廊下に出ました。
外靴は持っていたので、そのまま中央の玄関から外に出るつもりでした。
そっちのほうが帰るのに早いですし」
彼女は淡々と話し始めた。
「でも、職員室を出ると、前に誰かが歩いているのが見えました。
その姿をみて、私は驚きました。
それは、『私』だったんです」
53 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:29:21.03 ID:zHwL3wp10
位置関係を考えるだけで複雑だ。
廊下を歩く俺。
その後ろには急に現れた『未来の』彼女。
そしてその後ろに、職員室から出てきた『現在の』彼女。
「未来の『私』は、なにかあせっているようでした。
急いで中央の階段から降りてきたみたいで。
そして、向こうのほうを見て、未来の『私』は叫んだんです」
「その声を、俺は聞いたんだ」
俺と彼女、二つの声が、ベンチの上で重なる。
「ストップ」
54 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:36:58.79 ID:zHwL3wp10
つまり、一体どういうことか。
俺はあの場所でで足を止めなければ、死んでいたかもしれない。
それをとめるために、未来の彼女は、その時間に現れ、叫んだ。
そのおかげで、俺は足を止め、結果的に「救われた」。
俺が振り返ろうとした瞬間、槍が突き破ってきたので俺は振り返るのをやめた。
もし振り返っていれば、二人の人がいたのが分かったはずだ。
叫んだ声の主『未来の彼女』と、その後ろに、それを目撃した、『現在の彼女』が。
56 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:40:27.02 ID:zHwL3wp10
その後、俺はトイレに向かった。
その後、『現在の』彼女は、状況を確認した。
自分が見たのが、『未来の』彼女であること。
その先の俺を、救ったこと。
「彼と話さなければいけない」そう思い、中央玄関から出て、ベンチで待つことにしたのだろう。
その後、『未来の』彼女は俺の後ろをついてきた。
そして、昇降口の扉の前に立ち、俺と目を合わせた。
もしかしたら、あの時彼女は俺と話したがっていたのかもしれない。
でも、それはできなかった。
なぜなら、俺は彼女が時を飛べることをまだ知っていないから。
58 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:46:36.21 ID:zHwL3wp10
「どうして……」
全ての真相が分かった俺は、頭を抱えたまま何度も呟いた。
日常の生活に疲れていた俺。
夢も持たず、目標も持たず、ただ、時間が過ぎるのを待っていた。
恋愛してみたいという意欲だって、日常生活に飽きていたからだ。
こんな俺を……
「どうして……おれを、そうまでして、救ったんだ」
残り20分の彼女の命。
18分前には、あと38分あった。
ここで俺と話をせずに、家で家族と最後の時間を過ごすとか、
やれることがあったはずだ。それなのに……
わざわざベンチで俺を待った。
わざわざ俺に『時』について説明した。
わざわざ俺に真相を教えてくれた。
「うあああああああ……」
彼女のその行動に、その心に、
そして、自分の不甲斐無さに、俺は絶望して、小さく叫んだ。
60 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:51:31.50 ID:zHwL3wp10
「どうして、だと思います?」
その言葉に、俺は顔を上げた。
「そんなの、決まってるじゃないですか」
彼女は顔を少し赤らめて、言った。
「あなたが、好きだからです」
63 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 19:56:01.15 ID:zHwL3wp10
「私は18分前、未来の自分を見ました。
そして、その必死な姿を見て、気づいたんです。
自分は、あなたを救おうとしているって」
彼女は俺に話し続ける。
「私は、自分の状況に諦めを感じていたんです。
寿命を知らせるこのカードによって、生活は縛られました。
このカードのせいで、私はずっと『死』について考えさせられました。
そして、あなたに会って、私は気づきました。
残り20分の命だって、誰かを救って死ぬことができるなら。
誰かに、生きることの大切さを身をもって教えることができるなら。
そして、誰かに、自分の気持ちを伝えることができるなら」
「それだけで、世界は変わるんです」
68 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:01:40.05 ID:zHwL3wp10
俺は、目の前に立つその少女が、天使のように見えた。
「……ありがとう」
ただ、今の俺は、彼女にこんな重い荷物を背負わせるわけにはいかないと思った。
だから、精一杯の気持ちをこめて、こう言った。
「おれは、救われた。
未来の君に、だけじゃない。
教えてくれた今の君に、救われた」
「おれも、君が好きだ」
74 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:09:04.01 ID:zHwL3wp10
突然、彼女が泣き出した。
「うっ……」
俺はなにか間違ったことでもしたのかと思い、慌てた。
こういう時どうすればいいのか、俺にはわからなかった。
でも、そんなことを考える必要はなかった。
「すいません、うれしくって」彼女は顔をくしゃくしゃにして笑った。
「実は、私が未来の自分を見たとき、少し不思議に思っていました。
未来の『私』は、泣いていたんです。
どうしてかなあ、と思っていたんですけど、やっと、その意味が分かりました」
そのとき彼女が見せた笑顔は最高だった。
「気持ちは、伝わるんですね」
75 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:12:04.05 ID:zHwL3wp10
彼女は俺の手からカードを取り、じっと見つめた。
「そろそろ、時間ですね」
「ま、待ってくれ」
思わず大きな声で言った。
「私が20分前のあなたを救わなければ、タイムパラドックスが起こってしまいます」
「待ってくれ」
タイムパラドックス?そんなの関係ない。
飛ばないで欲しい。
「私がいまから飛べば、ちゃんとあなたを救うことができます」
「待ってくれ、待ってくれ……」
76 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:15:06.32 ID:zHwL3wp10
「私が飛ぶのは、タイムパラドックスとか、そんな理由じゃないですよ。
あなたが好きだからです。あなたを、救うためです。
あなたにはまだやることがあります。
だから、どうか、生きてください」
「手を、握ってもいいですか?」彼女は俺の左手を握った。
その手が暖かくて、彼女が生きているのを感じた。
彼女はうっすらと泣いている。
「必ず、あなたを、救いますから」
彼女は、俺の前から、消えていった。
85 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:25:33.05 ID:zHwL3wp10
何も考えられない。
ただ俺は、ベンチに座っていた。
どうすればよかった?どうすべきだった?
彼女の手をつかんで、消えないようにすべきだったか?
彼女に『好きだ』と伝えたのは間違いだったか?
20分前の彼女に、話しかけるべきだったか?
あの廊下を通らないべきだったか?
もっと、まっすぐに、生きるべきだったか?
彼女に救われたはずなのに、おれは、どうすればいいかわからなかった。
89 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:32:02.82 ID:zHwL3wp10
頭を抱えていると、声が聞こえた。
さっき、彼女が言っていた言葉。
「あなたにまだ、やることがあります」
頭の中でなにかが割れ始める。
救うのは大体16、7分前の俺。
カードの数字は、『00:00:20』。
差は?この3分間は?
『未来の』彼女は俺を救って、それからどうした?
俺は立ち上がり、走り出した。
彼女が歩いていった、東門へ。
96 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:36:32.59 ID:zHwL3wp10
走りながらも、頭の中はいろいろなことを考えている。
どうして気づかなかったんだろう。
彼女は待っているはずだ。東門で。
彼女が16分前に飛んだのは、あと4分、なにかをするためだ。
何のためだろうか?
下駄箱のときの彼女の目を思い出す。
「もしかしたら彼女は俺と話したがっていたのかもしれない」
彼女とベンチで話したのは3分ぐらい。
どうだろうか?追いつくだろうか?
彼女は待っているはずだ。俺と、最後の会話をするために。
残り時間数秒を刻む、呪いのカードとともに。
俺は全身の気持ちを集中させ、本気で走った。
100 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:42:15.27 ID:zHwL3wp10
東門の近くまで着き、俺は彼女の姿を探した。
彼女はどこにいるのだろう。
どうやら、学校の敷地内にはいないのか……
そう思い、東門から外を見ると、外の道路に、彼女がいた。
俺の姿を見つけると、さっきのようににっこりと笑う。
そして、少し大声で言った。
「バレちゃいましたか」
102 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:43:28.89 ID:zHwL3wp10
彼女は、俺とベンチで話したように、そう言って笑った。
時間がもうあまりないことは分かってる。でも、俺は言いたかった。
俺を救ってくれた、感謝の気持ちを。
20分前にストップをかけてくれた彼女に。
生きることの大切さを教えてくれた彼女に。
最後に、俺と話す時間を作ってくれた、彼女に。
104 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:46:11.18 ID:zHwL3wp10
彼女は、俺とベンチで話したように、そう言って笑った。
時間がもうあまりないことは分かってる。でも、俺は言いたかった。
俺を救ってくれた、感謝の気持ちを。
20分前にストップをかけてくれた彼女に。
生きることの大切さを教えてくれた彼女に。
最後に、俺と話す時間を作ってくれた、彼女に。
106 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:50:38.61 ID:zHwL3wp10
彼女はまだ笑いながら、言った。
「ちゃんと、救えましたよ」
俺はその言葉で、涙が出てきた。
107 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:55:48.62 ID:zHwL3wp10
何を言えばいいのか、もう何を言っているのかも分からなくなっていた。
ただ、俺は叫んだ。
「君を救いたい」
「時間なんて、寿命なんて、矛盾なんて、関係ない。
君が俺を救ったように、俺が君を、その運命から、救いたい」
誰が聞いても笑い出しそうな台詞を、俺は本気で叫んだ。
どうすればいいかなんて、俺には関係なかった。
奇跡が起こるのを祈るしかなかった。
彼女は少し驚いた顔をして、その後、にっこりと笑った。
そして、突然、こんなことを言った。
「左のポケットを見てください」
109 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 20:59:54.69 ID:zHwL3wp10
ポケット?どういうことだろうか。
制服のズボンは、本気で走ったせいでくしゃくしゃになっていた。
俺は左のポケットに手をやる。
彼女に驚かされたのは、何度目だろうか?
そこには、彼女が持っているはずの、寿命を知らせるカードが、あった。
111 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:04:15.86 ID:zHwL3wp10
彼女の声が聞こえる。
「これは、私が『時』を飛ぶ力を得る代わりに、受け取った物です」
「あなたにはまだ、やることがあります」
「残り少しのの命だって、誰かを救って死ぬことができるなら。
誰かに、生きることの大切さを身をもって教えることができるなら。
そして、誰かに、自分の気持ちを伝えることができるなら。
それだけで、世界は変わるんです」
そのとき彼女の右から、大きなトラックが近づいていた。
進行方向がずれていて、まっすぐに彼女に向かってくるようだった。
時計は、残り03秒を示している。
114 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:06:13.52 ID:zHwL3wp10
頭の中で、次々となにかが組みあがる。
力のために、このカードを持つ必要があった。
多分、自分ではカードを捨てることができないだろう。
ならば、時を飛ぶ力を捨て、寿命の呪いから解き放たれるには、どうすればいいのか?
だから、彼女は俺にカードを渡した。
俺と手をつないだときに、ポケットの中に滑り込ませて。
俺はもう、迷わなかった。
彼女を救うと、決めたから。
俺は本気で、カードを叩き割った。
119 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:15:44.21 ID:zHwL3wp10
彼女が走りよってきた。
俺は泣きながら、彼女を抱きしめた。
「ありがとう、ございます」彼女も泣いているようだった。
「あなたなら、やってくれると思っていました」
「私は、あなたに救われました」
トラックはどこかに行ったらしい。もう気にも留めていないけど。
彼女を離すと、二人で笑った。
初めて彼女の笑い顔を見た。
123 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:19:12.74 ID:zHwL3wp10
落ち着いてきた俺は、彼女に尋ねた。
俺がここまで走って追いついたのも、呪いを解く術に気づいたのも、
奇跡だと思っていたけれど……
「もしかして、俺がここに来るのまで分かってて、
カードを叩き割るということまで思いつくと賭けて、
カードをポケットに入れたわけ?」
俺にまくし立てられたのに驚いたのか、
彼女は舌を出して、そして言った。あの時のように。
「バレちゃいましたか」
「でも、賭けたんじゃありません」
彼女はまた、ニッコリと笑った。
「あなたを、信じていましたから」
おわり
137 : ◆saki4qw0nY :2007/11/17(土) 21:28:58.88 ID:zHwL3wp10
読んでくれてありがとうございました
こういう話はオチが難しい、絶対に
(彼女が死ぬエンドも考えていたんだけどね)
一度でいいから「時」についての小説を
書いてみたいと思って、初めてスレを立てました
またスレ立てるときはこの鳥で立てます
そのときはよろしくー
143 名前: ◆saki4qw0nY [] 投稿日:2007/11/17(土) 21:43:34.63 ID:zHwL3wp10
分からなかった方のために構想メモ
ってこれを見ても分からないか、きたないし

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/17(土) 21:20:42.24 ID:Jf54ciAQ0
俺も>>1を信じていましたから
ハッピーエンド乙






